一般的には、自国の利率と自国通貨価値は比例し、他国の利率と反比例するとされています。
これまで、日本のゼロ金利と米国の高金利により、金利負担のない日本円を借りて、米ドルに両替して高金利で運用して収益を上げる円キャリートレードが横行しており、この円キャリートレードは、大量の円が売られ、大量のドルが買われるため、円安の要因とされています。
また、日本国内製造業の低迷加速による国産品の魅力低下と海外輸入品の増加による貿易・サービス収支の赤字の持続も中長期の円安トレンドとなっています。
経済産業省の通商白書のグラフを見ると、実際の通貨移動を伴う実需としては、貿易・サービス収支となり、2016と2017年を除くと2011年以降は一貫して赤字となっており、2025年10月の速報も貿易・サービス収支が赤字であるので、日本は赤字・円安体質から脱却できずにいます。
2025年末になって、日銀の利上げと米国の利下げが決定し、内外金利差が縮小することとなりました。
これまで、多くのエコノミストは、内外金利差の縮小すると円キャリートレードによる金利差による収益も縮小し、円キャリートレードの巻き戻しが起こり、円高になると言っていました。
しかし、現実は、日銀の利上げと米国の利下げが決定による内外金利差が縮小しても、円安に歯止めがかかりませんでした。
多くのエコノミストはそれぞれのバックボーンやイデオロギーによる恣意的な提言でなかなか当てにできません。
特に電気・電子機器の事業を経営していくには、技術はもちろんですが、為替動向は原価率や利益率に直結するため、無視できない要素となっています。
それでは、恣意的要素を一切取り除き、機械的に1年ごとに円キャリートレードした結果をシュミレートしてみました。
単純に、年度初めに日銀政策金利で10億円を借りて米ドルに両替して米国1年債権を購入し、年度末で満期で償還し日本円に両替して借金を返済します。
それらの円キャリートレードの収益は下記のとおりとなります。
| 年度 | 日銀政策金利 | 米国1年債券利回り | 為替レート | 投資額(円) | 1年債権収益 |
| 2015年度 | -0.10% | 0.15% | 120.35 | ¥1,000,000,000 | ¥1,480,151 |
| 2016年度 | -0.10% | 0.77% | 121.06 | ¥1,000,000,000 | ¥7,155,086 |
| 2017年度 | -0.10% | 1.90% | 112.82 | ¥1,000,000,000 | ¥18,369,582 |
| 2018年度 | -0.10% | 2.69% | 109.14 | ¥1,000,000,000 | ¥26,865,335 |
| 2019年度 | -0.10% | 2.55% | 108.85 | ¥1,000,000,000 | ¥25,428,177 |
| 2020年度 | -0.10% | 1.44% | 108.35 | ¥1,000,000,000 | ¥13,968,846 |
| 2021年度 | -0.10% | 0.08% | 104.71 | ¥1,000,000,000 | ¥924,033 |
| 2022年度 | -0.10% | 0.77% | 115.07 | ¥1,000,000,000 | ¥8,685,835 |
| 2023年度 | -0.10% | 4.69% | 130.18 | ¥1,000,000,000 | ¥53,050,369 |
| 2024年度 | -0.10% | 4.73% | 147.23 | ¥1,000,000,000 | ¥46,304,756 |
| 2025年度 | 0.50% | 4.16% | 144.11 | ¥1,000,000,000 | ¥45,258,159 |
| 2026年度 | 0.75% | 3.51% | 157.76 | ¥1,000,000,000 | ¥34,876,450 |
2026年度に関しては、為替が2026年末まで変動しない仮定で収益を算出しました。
2026年度に関しては、日銀利上げと米国利下げを折り込んだうえでの円キャリートレードの収益ですが、2026年度末での大きな利益が算出されました。
日銀利上げと米国利下げがあっても2026年度はこれだけおおきな収益が見込めますから、大手機関投資家は、果たして、円キャリートレードをやめるでしょうか?
恣意的要素なしでの機械的算出で今後も円キャリートレードの収益が見込めることから、円安が継続するのは当然のことではないでしょうか?
短期的には投機筋や日銀介入などで上下変動があるのでしょうが、基本的には円安トレンドが継続すると思われます。

